CASE 06メディアアーティスト
(研究者)

テクノロジーが更新する「感性」の行方

『感性のインフラ』を作るというテーマを掲げ、メディアアートから心理学、工学的アプローチまで多角的に研究を展開する川北さん。
AI時代における新たな「感性」のあり方を探求するその現場で、目に見えない思考をいかに可視化し、他者と共有するのか。
またどのようにして他者との対話を生み出し、新たな「感性」の種をまくのか、その発信の舞台裏に迫ります。

面高 有紀さん

Interviewee
京都芸術大学 
川北 輝さん

専門は感性工学、メディアアート。公認心理師の資格を持ち、感性工学をバックグラウンドに『感性インフラストラクチャー』を提唱する研究者。アーティストとしても活動し、学会や個展でのポスター・作品展示を通じて、テクノロジーがもたらす新たな感性の価値を発信している。

研究の原点と『感性インフラストラクチャー』

川北さんの学内でのポジションの詳細について教えてください。

私は現在、京都芸術大学の芸術学部キャラクターデザイン学科で働いており、主に3DCGとメディアアートの講義を受け持っています。
またアーティストとしての活動も並行しており、メディアアートの視点からキャラクター表現の探求を続けています。

川北さんが講師を務める京都芸術大学エントランスにて。

研究内容についてお伺いしても?

『感性のインフラ』を作るという視点から、『感性インフラストラクチャー』という研究に取り組んでいます。

電気やガス、水道が生活に不可欠なインフラであるように、人の感性もまた、現代のAIや多様なテクノロジーによって絶えず更新されていくものだと考えており、テクノロジーを通して、人の心や感性をより豊かにアップデートしていくという研究をしています。

臨床心理学や知識科学などを修められているとの事ですが、感性やデザインを研究対象にしようと思ったきっかけは?

もともとは公認心理師の国家資格取得を目指して大学へ進学したのですが、そこで出会ったのが感性工学という分野で、幸運にも、その道のパイオニアである先生に師事する機会に恵まれました。

感性工学とは、例えばある商品を見たときに抱く「ワクワクする」「ちょっと難しい」といったポジティブ・ネガティブな感性をデザインに活用していく学問です。

マツダや日産といった自動車メーカーでも導入されており、広島から世界へ発信されている国際的な技術ということですごく興味を持ちました。

研究のアプローチについて教えてください。

心理学的なアプローチで分析を行うこともあれば、工学的な手法で社会実装を目指すこともありますし、メディアアートとして表現に落とし込むこともあります。

言葉で説明しきれない時には、メディアアートで表現すると、直感的に伝わることも多いので、色々と使い分けています。

音を可視化した作品。

アーティストとしても活動されているかと存じますが、日々どのようなものからインスピレーションを受けていますか?

モチーフの根底にあるのは『感性』であり、私自身の原体験を大切にしています。

2025年は【Flow(流れ)】をテーマに据え、時間的・空間的な移ろいや、海や川といった身近な水の流れが生む揺らぎからインスピレーションを得て制作に励んでいました。

例えば、3Dプリンターで造形した花瓶に模様を施し、正面からは水色に見えるが、角度を変えて回すと緑色へと変化して見える。

そうした視覚的な変化を通じて、流れを表現した作品があります。

作品名「水の具現化」:流動的な水を、花瓶という造形物へ昇華させたアート作品。

インスタレーション作品「Flow −龍神−」:国際アートフェア「UNKNOWN ASIA 2025」にて。

感性について、もう少し掘り下げてお伺いしても?

人類は火を発明して料理をすることで味覚を広げ、白熱電球の登場によって夜の活動時間を手に入れました。
そして現代、インターネットの普及により、あらゆる情報が身近に手に入るようになっています。

このように、人の感性とは人類自らが開発したテクノロジーによって、次々と更新されていく存在なのではないか。私たちはそうした観点に立っています。
それに基づき、どのようなメディアテクノロジーがあれば、人の感性を中長期的にアップデートしていけるのか。

その仕組みづくりを目指しているのが『感性インフラストラクチャー』です。
これは感性工学から派生した概念ですが、哲学に近い探求でもあります。

キャラクターデザインと感性工学の結びつきについて教えていただけますか?

キャラクターデザインの領域は、一般的なエンターテインメントに留まりません。
例えば、神社で目に見えない存在を想像し、手を合わせてお辞儀をする。
こうした、形のないものに対し想像力を働かせて設計することも、キャラクターデザインの一つです。

一方で感性工学は、どのような要素を組み合わせれば人の感性に響くのか。
または危険エリアへの侵入を防ぐといった特定の行動を促すにはどのようなデザインが有効なのか。
これらをデータに基づき定量的に分析し、科学的なアプローチでデザインへと落とし込んでいく方法論として活用されています。

生成AIとの共生と、次世代への感性教育

川北さんは講師として、出前授業のような形で教育・保育施設へ訪問される事も?

はい。
ご依頼をいただいた際には、講師として幼稚園や小学校へ伺っています。
具体的な内容としては、子どもたちとのセッションやグループワークを通じた対話型の授業を行ってきました。

具体的に、教育・保育施設ではどのような授業や研究を?

感性のインフラ構築を目指す中で、生成AIの活用に大きな可能性があると考えています。
最近だと画像・文章生成技術の進化により、短いプロンプトやキーワードを入力するだけで数秒〜数十秒後にはオリジナルの絵本が出力できます。

例えば、園児たちに「今日はどんなお話が聞きたい?」と問いかけ、出てきたキーワードをもとにその場で絵本を生成します。
それを読み聞かせ、子供たちの反応をさらにAIにフィードバックして物語を更新していく。
この繰り返しによって、非常に密度の高いインタラクティブな会話が生まれることが分かりました。
これが幼稚園児を対象に行った実践例です。

もう一つは小学生を対象としたワークで、リアルタイムで生成した絵本をそのまま台本として使い、即興劇を行いました。

音楽生成AIでBGMをつけ、子供たちの自発的な振り付けによる演技を組み合わせることで、リアルタイムな即興表現を実現したという実践報告になります。

AI絵本の読み聞かせを通じて、子供たちの感性のインフラを築く。

AIで絵本を?どのくらいで生成されるのですか?

生成には数十秒を要するため、その間に園児たちとコミュニケーションを取って待ち時間を繋いでいます。

また、そのまま出すと小学校の教科書のような漢字混じりの難しい内容になってしまうため、「幼稚園向けに分かりやすくして」といったプロンプトを事前に設定して運用しています。

そういった活動も、研究のモチベーションに?

そうですね。
私の場合、アート、教育、そして研究という3つの領域を行き来しています。
それらが互いに循環することで得たインスピレーションによって、目指すべき『感性のインフラ』を形にしていきたい、という想いで活動を進めています。

今の時代、AIなどの登場を受けて、新たな感性を追求していくのでしょうか?

そうですね。
例えば、私は生成AIを活用したカウンセリングAIを開発していますし、学生はAI時代だから身体性が大切だと考えて、マウスを逆転させて身体的な体験を生み出すゲームを開発しています。

テクノロジーが最終的にどう人の感性に影響を与えるのか、という問いは私たちにとって究極の命題です。

メディアテクノロジーを通じて社会をより良くしていこうという共通認識を持って、日々研究に取り組んでいます。

マウス裏のセンサー部分を専用のプレートで素早く払って手裏剣を発射する:2026年3月情報処理学会 第88回全国大会で発表した研究より

学術的なデザイン分野でも、生成AIを取り入れている方が増えている?

はい、増えていますね。
中には自分の手で描きたいという強いこだわりを持って入学してくる学生もいます。
しかし、社会全体でAI活用がスタンダードになりつつあるため、使いこなせないと取り残されてしまうという状況でもあります。

他にワークショップなどで実践された事例はありますか?

例えば、大学2年生の学生たちが中心となって開発した、3Dプリンター製のお花のカードゲームがあります。
これは高齢者施設に入居されている方を対象としたもので、昔の思い出を語ることで認知機能の維持・改善を図る回想法を取り入れています。

ルールは、お話を終えたらカード(花びらのパーツ)を台座に挿していくというシンプルなものです。
最終的には参加者全員で一つの大きなお花の作品を完成させる、というデザインになっています。

並べられた様々なお花のカード

またローマ字未習得児童のためのライティングキーボードを用いたタイピング支援システムなどもあります。
これはローマ字を知らなくても次に押すべきキーを光って教えてくれるというもので、物理的なガイドに沿って直感的にタイピング入力が学べます。

タイピングシステム(左)とライティングキーボード(右)

学会発表におけるポスターの役割とこだわり

学会で発表するポスターに、定められたサイズなどはあるのですか?

学会によって異なりますが、大体A1サイズが多いかと思います。
情報が大きくて見やすいA0サイズも使われたりします。

学会での発表方法には、どのようなものがあるのでしょうか?

多くの学会に共通しているのは、掲示したポスターの前で説明を行う【ポスター発表】と、壇上に立って大勢の前で授業するような形の【口頭発表】の2つです。

日本バーチャルリアリティ学会などの場合はこれらに加えて、実際に動くVRシステムなどを来場者に体験してもらう【デモ発表(技術芸術展示)】という形式もあります。

学会での役割や運営について、現在はどのような活動をされていますか?

昨年開催された日本バーチャルリアリティ学会にて、アート・エンタテインメントセッションの審査員を務めさせていただきました。
学生や研究者の作品・発表に対し、新規性やコンセプトの明確さ、表現の完成度といった観点から、学術的に評価とフィードバックを行いました。

VR空間上で開催される学会(バーチャル学会)での研究発表の様子。

主に参加される学会の規模や開催頻度はどれくらいですか?

学会にもよりますが、日本デザイン学会なら300〜400名ぐらいの発表件数があり、年に1回、春季研究発表大会という大規模なものが開催されています。

今年は6月に千葉県で開催される予定でして、今回ソクプリさんにポスター印刷をお願いしました。

いつ頃からポスター印刷など含め学会の準備をされ始めるのですか?

研究は少なくとも半年以上はかかるので、半年間学生たちと一緒に取り組みます。
テーマも心理学的なアプローチ、アート表現、プログラミングを使った工学的な表現など様々です。

学会ポスターのデザインで、レイアウトなど参考にしているものはありますか?

基本的には、多くの学会に足を運び、学んでいくことが大切だと考えています。
例えばデザイン学会などでは、ポスターが魅力的でデザイン性が高いほど、多くの来場者が足を止めてくれます。
そこから、コミュニケーションの幅が広がっていく。
集客という面でも、デザインの力は有効なんです。

実際の展示スタイルとしては、背面にポスターを掲示し、手前の展示台に作品を置くという形が多いですね。

ソクプリとの出会いについて、お伺いしても?

昨年個展を開催したのですが、メインビジュアルをポスターにして展示したいと考え、印刷会社を探していたんです。

ソクプリさんの印刷は通常のポスターだけでなく、布ポスターやアートキャンバスなど選択肢が豊富で、活用の幅が広いと感じ依頼させていただいたのがきっかけですね。

メディアアート展示作品:右側のポスターは当店で印刷をさせていただいたもの。

初めてソクプリでポスター印刷を注文した際、率直にどう感じられましたか?

PDFデータでそのまま入稿できる手軽さに加え、納期プランによって価格設定が分かれているなど、こちらの状況に柔軟に対応していただける点が非常に良かったです。

「急ぎの時はコストをかけてでも早く欲しい」「時間に余裕がある時はコストを抑えてゆっくりお願いしたい」といったように、その時々に合わせて使い分けができるので魅力的だと感じました。

最後に今後の研究に関する意気込みを、ぜひお聞かせください。

これからも『感性インフラストラクチャー』の研究をどんどん進めていき、身近なテクノロジーを通じて人の感性にどうアプローチできるのかを追求していきたいと考えています。

また研究内容を発信する際、ポスターとして分かりやすいデザインで伝えることが必要だと思っています。
今後とも末長くお付き合いをさせていただければと思っています。

こちらこそ今後ともよろしくお願いします。本日は貴重なお話ありがとうございました!

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